【更新日:2023年6月3日】公開日:2023年4月2日
ChatGPTなどの生成AIによる影響で「ホワイトカラーの仕事が激変(仕事が無くなる職種も)」という話題は聞くものの「具体的にどんな影響があるか?イメージしきれてない」という方。また、ChatGPTを活用し「どう業務効率化できるか」を調べたが「具体的にどのように業務に活かせるか?よくわからない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、
- ChatGPTなどの生成AIの業務利用をして分かったこと。
- チャットボットへの応用で調査や検証を進めて分かったこと。
それらに基づき「業務にどう活用できるか?」の観点でポイントをまとめます。
「出てくる用語が技術用語や知らない単語が多くて分かりづらい」と感じている方のために、最後に頻出用語集をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ChatGPTの業務効率化。その影響と活用のポイントは?

2023年に入ってから、ChatGPTや生成AIに関するニュースを聞かない日はないほど話題に挙がり続けています。具体的にはどのような影響や変化があるのでしょうか?
ChatGPTの仕事への影響。ホワイトカラーのデスクワークの激変
ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(Large-scale Language Model)のAIは、AI技術の進化に伴い、これまで難しいとされてきた自然言語処理のタスクについても「業務の実用に足る」高い性能を発揮しています。この技術の進化が、急速な普及の一因となっています。
例えば、生成AIは、文章の要約や編集、さらには企画書やプレゼンテーションの作成など、より高度なタスクにも対応できるようになりました。これにより、従来は時間や労力がかかっていた作業が、効率化されることが期待されます。
また、生成AIは複雑な質問に対しても適切な回答を提供できるようになりました。これにより、カスタマーサポートやFAQ作成など、顧客や社内メンバーからの質問対応などのコミュニケーションにおいても、重要な役割を担うことができるようになります。
ChatGPTによる調査、企画、決定までの業務プロセス変化の例

業務効率化の活用ポイントと、個人と企業の成功のために必要な視点
社内のデスクワーク業務において、要約や分類、分析、報告などのタスクが効率化されることで業務の質が向上し、時間の節約ができるようになります。ただし、業務効率化によって単なる「コスト削減」を目指すだけでなく、削減できた時間や、試行回数のアップによる質の向上を通じて、個人としても企業としても「能力の向上」までを目指すことが重要です。
1)繰り返し発生する作業の自動化で、時間削減
2)試行と思考のサイクルの回数アップで、質の向上
3)スキルや思考の引き出しを増やし、能力の向上
個人の視点
生成AIを活用することで、自分自身の作業負荷を軽減し、より効率的に業務を遂行できるようになります。これにより、個人のスキルを磨く時間や創造的な仕事に集中する時間を増やし、キャリアの向上につなげていくことが重要となります。
企業の視点
生成AIの活用により、全体の業務効率が向上し、従業員がより価値のある業務に専念できるようになります。また、人間が行うのが困難な大量のデータ分析や高度な問題解決にも対応できるため、競争力が向上し、企業の成長を促進することができます。
生成AIで簡単に実現できることは「業務効率化」です。「調査・分類・分析・報告」等のうち定型化できるものは「完全自動化されていく」ことは社会の流れとして必然です。
ただし、今までやっていたことを単に「自動化」に置き換えるだけでは、縮小均衡に陥ってしまうリスクがあります。個人としても企業としても、「スキルや思考の引き出しを増やし、能力の向上」まで、常につなげていける次の段階まで進むことが重要です。
「個人として仕事が無くなる」や「企業として競争力が無くなる」といった事態を避けるためにも、すぐに実現しやすい業務効率化はいち早く取り入れて使いこなし、自動化を織り交ぜたフローが「通常業務フロー」の状態まで早く持っていくスピード感が求められます。
ChatGPTの業務活用の王道パターン7選と活用事例

今後は業務上で当たり前になるであろう生成AIの使い方について、業務活用で頻出していきそうな王道パターンとその活用事例を挙げます。
1)生成AIで観点をリストアップ
生成AIを活用して観点をリストアップし、それを参考にして「モレなくダブりなく」の思考を補助することができます。これにより、より網羅的な議論やアイデア出しを行うことができます。
活用事例)
- プロジェクトの進め方の手順のリストアップ
- 学習手順のリストアップ
- ヒアリング項目のリストアップ
- アジェンダの項目のリストアップ
2)項目をAIに渡し、表形式でリストアップ
生成AIに項目を渡し、表形式でのリストアップを依頼することで、必要な項目にて分類済みの整理された情報を得ることができます。これにより、情報を一目で把握しやすくなり、効率的なデータ分析が可能になります。
活用事例)
- 市場調査の結果を表形式で整理
- 業務フローの整理と可視化
- 複数の製品やサービスの比較表作成
3)タイトルと見出しをAIに渡してドラフト作成
タイトルや見出しを生成AIに渡すことでドラフトを作成することができます。その後、人が内容を確認・修正することで、より高品質な文章が完成します。これにより、文章作成の効率化や品質向上が図られます。
活用事例)
- ブログ記事のドラフト作成
- プレゼンテーションスライドの内容作成
- マーケティング戦略の概要作成
4)出力形式や表現形式の変換
生成AIを利用してテキストデータを別の形式に変換することができます。これにより、データの活用範囲が広がり、多様な用途で活用することができます。
活用事例)
- テキストをCSV形式に変換
- 文章を箇条書きに変更
- 文章を表形式に変換
5)知らない分野の事前調査
生成AIを利用して新しい分野の事前調査を行うことができます。これにより、効率的に新しい知識を習得することができます。
活用事例)
- 新しい技術トレンドの概要調査
- 競合企業のサービスや戦略の調査
- 国際ビジネスでの法律や規制の調査
6)データを渡して分類
生成AIを利用してデータの事前分類を行うことができます。これにより、目視でデータを一つ一つを見て分類しなくても自動でデータの分類と分析を行い、質問や議論の準備も整えることができます。
活用事例)
- 顧客データのセグメント分析
- 商品のカテゴリ別分類
- 文書のジャンルやトピック別分類
7)議事録作成や報告書の作成
生成AIを活用して議事録や報告書のドラフト作成を行うことができます。これにより、時間の節約や作業の効率化が図られます。
活用事例)
- 自動書き起こしをした会議の音声記録を元に、整理された議事録を生成AIで書き起こす
- ログ解析に生成AIを利用して、あらかじめ定めた形式で報告書を作成する
- 調査報告書の要約作成に生成AIを利用して時間を節約する
参考記事:スグ使えるChatGPTへの依頼用の入力テキスト(プロンプト)を紹介。
ChatGPTなど生成AIの得意分野やメリットは?

ChatGPTなどの生成AIには得意分野があります。業務上で役立つ得意分野を知っていれば、業務への適用をうまく進めることができます。
得意分野は各専門分野の一般論、要約、分類、リストアップ
ChatGPTは、各専門分野の一般的な知識についての回答を得意としています。これにより、専門的な内容の調査や分析も容易となっています。
さらに、情報加工も得意分野です。大規模言語モデルを元にした理解から「加工したい情報」とそれに対して「依頼したい内容」を投げかけたら、速やかに以下のようなタスクをこなすことができます。
- 文章の生成
- 情報の要約
- 情報の分類
- 情報のリストアップ
これらのタスクは、人間が一からやるよりも、生成AIに依頼した方がずっと低コストかつ短い時間で進めることができ、人間の仕事を補助することが可能です。
メリット出す使い方のコツは「AIと人の相互補完」の前工程・後工程
ChatGPTなどの生成AIの利用方法は多岐にわたりますが、効果的な利用のためのコツは、AIと人間の相互補完を意識することです。AI→人→AI、人→AI→人のステップを活用します。
- 前工程が人間の時は、後工程でAIに何を渡してどう依頼するか?
- 前工程がAIの時は、後工程で人間が何の作業をして完了となるか?もしくは次に何をAIに渡すか?
これらを考えながら仕事を進めることが、今後のスタンダードになっていくと考えて良いでしょう。
ChatGPTなどの生成AIの苦手分野やデメリットは?

生成AIが仕事に与える変化の影響力は大変大きいものがありますが、現段階では万能ではありません。苦手分野やデメリットは以下となります。
間違った内容をもっとらしく伝えてしまう
メディアの報道などで言われている通り、ChatGPTは「もっともらしく間違った内容を伝えてしまう」弊害があります。
AIの出力内容の正確性や妥当性のチェック、最終的な判断は人間が行う必要があります。
<デメリットの解決方法>
チェックフローを入れる。間違いを最小化するタスクに落とし込む。
ただ、生成AIを使う側がその注意点の認識を持ち、以下の工夫を取り入れれば、メリットに比べたら「小さな問題」にまで抑え込むことができます。
- 業務プロセスとして自動生成をした場合も、公開する情報は必ずチェックフローを入れる。
- 間違った回答を出づらくするために、回答の条件指定をしっかり行う。
- 生成AIにデータを渡して処理するタスクを「情報の変換・要約」レベルのタスクに落とし込む。
苦手分野は新たな観点の発見やひらめき
ChatGPTなどの生成AIは現状は、「これは新たな観点だ」という気づきや発見、ひらめきは苦手な部分があります。しかし、適切な指示を与えることで、新たな観点の発見も可能です。
<デメリットの解決方法>
条件付けして依頼すれば新たな観点の発見もできる
具体的な条件や制約を設けて生成AIに依頼することで、新たな観点やアイデアの発見を補助する役割が期待できます。このようなアプローチにより、ChatGPTの苦手分野を補完し、より有益な結果を得ることができます。
ChatGPTなどの生成AIの利用規約の注意点、業務活用時の注意点

ChatGPTなどの生成AIの今後の業務への影響力が大きいことは直感的にも理解できるものの、企業が利用するにあたっては以下の注意点があります。
- 「情報セキュリティ」における注意点
- 「業務活用」における注意点
これらは、情報セキュリティや業務活用において問題が発生しない生成AIのツールやChatGPT自体ではなくOpenAIのAPI版を使う(システム構築が必要)、もしくはOpenAIのAPIと連携されたサービスを使うことで解決する方法があります。
ChatGPTやChatGPT Plusは個別申請しない限り、学習データの対象に。
ChatGPTやChatGPT Plusを使用する場合、個別に申請しない限り、自動生成のための学習データとして利用される可能性があります(2023年3月1日時点)。これを避けたい場合は、OpenAIのAPIを利用したり、API版と連携されたサービスを利用することで、自動生成のための学習データの対象外となることも可能です。
学習データの対象になることの何がリスクか?
学習データの対象になることの何がリスクか?というと、他の人がAI上で自動生成を行ったときに出力される情報の素材として、自動的に使用されるリスクがあるためです。外部の人が利用した時に「社外秘情報」や「個人情報」が表示されてしまうリスクが発生します。
生成AIの業務利用時の注意点
- 利用規約で入力データの扱いを必ず確認すること
- 自動生成の学習データに使用されるリスクがある場合は、社外秘情報、個人情報は入れないこと
- 機能の検証の際も、ChatGPT自体でダミーデータを生成して使用するなど、学習に使われても問題ないデータを使うこと
- 社内の情報を入れる場合は、OpenAIのAPIと連携したサービスなど、自動生成の学習データに利用されないことを確認できているサービスを活用すること
これらに注意することが必要です。

日本語訳(ChatGPTにて翻訳)
※正式には自社・個人の責任で最新版の利用規約を確認ください。
(c) サービスの改善にコンテンツを利用する。弊社API(「APIコンテンツ」として提供または受信されるコンテンツ)から提供されたコンテンツを、弊社のサービスの開発や改善には使用しません。弊社のAPI以外のサービス(「非APIコンテンツ」)からのコンテンツは、サービスの開発や改善に役立てることがあります。非APIコンテンツがモデルの性能を向上させるためにどのように使用されるかについては、こちらで詳細をご確認いただけます。非APIコンテンツがサービスの改善に利用されることを望まない場合は、このフォームに記入することでオプトアウトできます。ただし、場合によっては、サービスが特定のユースケースに対応するために必要な機能が制限される可能性があることにご注意ください。
・・・利用規約のキャプチャ画像内に引いた赤線部分の記述より、APIコンテンツは改善に使用せず、非APIコンテンツ[いわゆる一般サービス版のChatGPT]は改善に使うことがあるとなっていることが分かります。
参考記事:ChatGPTで履歴表示とAIモデル訓練データへの使用をOFFに設定する手順。
AIの生成内容が間違っていてもよい状況で使う
AIの出力内容の正確性や妥当性のチェック、最終的な判断は人間が行う必要があります。生成AIは「もっともらしく間違った内容を回答する」可能性があるためです。
そのため、生成AIを利用する際には、出力された内容が正確であるかを確認するフローを作成することが重要です。これにより、誤った情報が伝わるリスクを軽減できます。
例)
- 自動生成したQ&Aをチェック後に公開
- 自動生成したブログ記事のドラフトを修正後に公開
- 自動生成された報告書をチェック後に共有
レスポンスは一般的なチャットボットより遅いことが多い
その他の注意点として、ChatGPTを利用する際には、膨大な量のデータを参照して処理することなどにより、一般的なチャットボットより回答完了までのレスポンスが遅いことがあります。この点を考慮して、利用状況やタスクに合わせた利用方法を検討することが重要です。
解決方法として例えば、Q&Aのコンテンツの自動生成の部分はChatGPTのAPIを利用し、社内メンバーや顧客などの利用者のアクセス頻度の多い接点には、自社のシステムや、チャットボットの専用ツールなど別システムで応答部分を担うなどのシステム設計や、業務設計が可能です。
AIチャットボットの活用:問合せ分類と分析、Q&A自動生成

AIチャットボットは、情報システム部や総務部などのバックオフィス部門での「社内FAQの質問者・回答者の業務効率化」、カスタマーサポートや営業・マーケティングなどフロントオフィス部門での「顧客対応の業務効率化」と「サービス利用者の利便性の向上」などでの活用が定着しました。
AIチャットボットも生成AIによる進化が期待されています。
Q&A作成作業がQ&A自動生成により劇的に効率化
ChatGPTなどの生成AIの活用で、AIチャットボットの構築プロセスや、回答精度、利用者の体験が劇的に向上することが期待されます。
特にQ&A自動生成の実現は、導入担当者・運用担当者の業務負担の削減や、Q&A改善のスムーズさの向上にとって大きなインパクトがあります。
AIチャットボットの導入時に避けられなかった作業、かつ担当者の最も大きな負担であった「Q&A文章の作成」が、今後は、Q&A自動生成ができるAIチャットボットの実現によって、この負担を大幅に削減することができます。
これまでのチャットボットやFAQシステムは、業務負担を軽減するための機能はあれど、担当者の業務負荷は一定の大きさで存在することが当たり前でした。それが、今後は「担当者は自動生成されたQ&Aの内容が正しいかを公開前に最終チェックするだけ」に限りなく近づいていくと考えられます。
ChatGPTで問い合わせ分類と分析
ChatGPTなどの生成AIを利用したチャットボットは、問い合わせ分類と分析にも利用できると考えられます。チャットボットが受け取った問い合わせ内容をChatGPTに渡すことで、その内容を解析できます。これにより、問い合わせの量が多い企業や団体などで、分類された問い合わせの内容を迅速に分析できることで、顧客ニーズや不満点などの情報を把握し、業務改善や製品改良にも役立てることができるようになります。
頻出用語集
頻出用語の一部を取り上げます。さらに頻出用語や、基礎知識を網羅的に知りたい方は、ダウンロード資料で把握することができるので、資料ダウンロードをして役立ててください。
生成AI(Generative AI)
生成AIは、人工知能技術の一分野でありデータから自動的に新しいコンテンツや情報を生成する能力を持つアルゴリズムやシステムを指します。生成AIは、自然言語処理、画像生成、音楽作成など、さまざまな分野で応用されており、その中でも特に話題となっているのが、大規模な言語モデルであるOpenAIのGPTシリーズなどの進化したテキスト生成技術です。
API(Application Programming Interface)
APIは異なるアプリやWebサイトが他のサービスとデータや機能をやり取りするためのインターフェイスです。APIを使用することで、開発者は他のプログラムやウェブサービスと簡単に連携できます。
例)Google Maps APIを使えば、地図機能を一から開発することなく、自社のアプリに地図機能を追加できます。レストランアプリで近くのお店を地図上に表示したり、企業が自社の場所をウェブページに表示できます。APIは、アプリやWebページに他のサービスの機能を追加するための橋渡し役です。
プロンプト(Prompt)
プロンプトとは、生成AIに対して指示や要求を与えるための入力テキストのことを指します。これにより、AIはユーザーの意図に従って適切な情報や文章を生成することができます。プロンプトは短いフレーズや質問形式で与えられることが一般的で、AIの生成物の質や内容を向上させるためには適切なプロンプトの設計が重要です。