【公開:2023年2月24日】
目次
社内ヘルプデスクのFAQチャットボットの作り方と運用
社内ヘルプデスクにおける社内FAQチャットボットによる応答の自動化で、社内全体の業務効率化が期待できることは直感的にもイメージがしやすいです。
例えば、社員の不明点がスピーディに解決できることで、次の行動に移る速度アップの効果や、質問を受けた社員の業務中断の頻度の低減により、業務効率化が期待できます
しかし、導入時や運用開始後の実務で、以下が気になる方は多いのではないでしょうか?
「様々なチャットボット構築方法があり、どんな作り方が適切か分かりづらい」
「運用開始後に具体的に何が必要となるか?分からなくて不安。」
「どう分析するのか具体的なイメージが湧かない。利用率?解決率?」
「分析結果を元にどんな改善のアクションをとるか?」
これらについて、本記事では、チャットボットの作り方、運用開始後の分析・改善の実務をまとめました。
社内ヘルプデスクのFAQチャットボットの作り方のコツ
以下では、社内ヘルプデスクの社内FAQ対応に向いているチャットボットは何か?を理解することから、チャットボット構築をスタートするための基礎知識を整理します。
社内質問の業務効率化には、AI型とシナリオ型はどちらが良いか?
社内FAQでは基本的にはAIチャットボットがベターです。シナリオによる誘導が必要な場合はシナリオ設計の機能も使えるAIチャットボットを選んだほうが良いです。
その背景として、社内質問は「多岐に渡る質問」を「質問者が明確に聞きたいことがあって聞く」といったシチュエーションがほとんどのためです。
そのため、以下の理由で、AIチャットボットの方が向いています。
AIチャットボットが社内FAQに向く理由
利用者のメリット
- チャットウィンドウ内における「ボタンの表示量の限界」に縛られずに「自由入力で聞きたいこと」を入力したら、その場で、その答えがあるかないかがすぐに分かる。
運用担当者のメリット
- 自由入力欄を設置できることで、利用者からの「問い合わせ内容」の履歴が残る。
- そのため「実際にあった質問」の履歴を元に分析して、想定外に多かった質問に対するQ&Aを追加したり、新たな質問傾向に気づけることで、運用開始後の改善が進めやすい。
シナリオボット単体では不利な点
- 一度に対応できる質問の範囲が「ボタンの表示量」の限界の範囲まで。
- 利用者の履歴が「運用担当者が想像できた範囲のボタン選択肢」の履歴に限られるため、運用開始後の本質的な改善が進めづらい。
これらより、社内ヘルプデスク対応のシチュエーションでは、
- 「多岐に渡る質問」を
- 「社員が明確に聞きたいことがあって」
- 「社員が能動的に調べて聞く」
といった場面がほとんどとなるため、社内FAQの対応にはAIチャットボットの方が向いています。
チャットボット運用の分析・改善のコツ
チャットボットの構築前の時点で、運用開始後の分析・改善のコツを把握しておくことは、適切な構築をすることに役立ちます。
チャットボット分析のためのファネル図
チャットボットの分析はファネル図で分解して捉えると簡単に理解しやすくなります。
階層構造化したシナリオボットと、一問一答の構造のチャットボット(自由入力に対してAIで内容を認識してQ&A回答をするボット)は、構造が異なるため、分析しづらいように見えます。
しかし、このファネル図のように捉えると、横並びで分析できます。
閲覧数
設置箇所の閲覧数は、最初の母数となる数字です。WebサイトにおいてはPV数(ページビュー)です。
<基本施策>
- 社員の接触頻度が多いページやアプリに設置する。
- 複数のページやアプリに設置することで、接点を増やす。
- 存在を知ってもらうようにスタート時にしっかりと社内告知をする。
- 認識しやすい位置に設置したり、起動ボタンの視認性を上げる。
<アクション事例>
- 社内ポータルサイト(自社構築サイト、SharePoint、Googleサイト等)に設置する。
- Teamsなど普段使っているチャットツールに利用導線を設ける。
- 外出が多いメンバーや、個別PCを持たないメンバー向けにスマホでアクセスできる環境の提供。
- 告知とともに、設置ページのブラウザのブックマークを必須化する。
利用数(お問い合わせ数)、利用率
「設置箇所の閲覧数×利用率=利用数」となります。閲覧数のうちの一部が利用数となるため、利用数を増やすには、閲覧数と利用率をそれぞれ最適化していく必要があります。
以下はチャットボットに対してメッセージ入力やボタン入力などの実際の行動を、利用者が起こした場合を「利用数」とした場合の施策です。
<基本施策>
- このチャットボットで何ができるかを訪問時のメッセージで伝える。
- どの範囲の問題に対して回答ができるかを伝える。
<アクション事例>
- 解決しない場合もまずは質問すればよいことを伝える。
- 例)「自動応答で、PCやネットワークなどの社内の情報システムに関する質問に答えます。解決しない場合も、担当窓口にご案内します。まずはこちらでご質問を!」
- 活用を促進するために、内容を更新した時などをきっかけに「○○について情報を最新化しました。○○について聞きたいときはここで聞いてください。」と、ことあるごとに再告知をする。
回答到達数
利用者に対するチャットボットの最終回答の表示数を回答到達数とします。
回答到達数はチャットボット活用時の最重要指標となります。
利用者の問題解決が本当になされたかどうかは「利用者の頭の中でしかわからない」ためです。また、解決/未解決数のボタンは一部の利用者しか押さないことから、事実ベースで確認できる成果の数値となるためです。
回答到達数を増やすための施策は、自由入力に対して文章全体の特徴を認識して回答をマッチングする「AI型チャットボット」と、「シナリオ型チャットボット」で、具体的な改善策は異なります。
1)自由入力のAI型チャットボットの場合の回答到達数の施策
<基本施策>
- 登録しているQ&Aの文章のライティングを実際の質問履歴に対してマッチングしやすくなるように最適化する。
- 事前の学習で対応しきれていない、もしくは事前に想定できてなかった同義語を追加で辞書登録をする。
- 運用開始後も機械学習を適用する場合は、実際の質問履歴を用いてトレーニングを行う。
<アクション事例>
- 履歴から質問時に使われている言葉を拾い、マッチングしやすくQ&A登録・修正をする。辞書登録や個別の学習を行う。
2)ボタン入力のシナリオ型チャットボットの場合の回答到達数の施策
<基本施策>
- 特に多い質問はチャットボット利用開始時など、早めにボタン表示する。
- 基本的には段階的な深掘り質問や、切り分けが必要な質問にだけシナリオボットを使う(利用環境により答えが異なる等)。極力、ボタンの設計が不要な自由入力のボットで解決する。
- カスタマージャーニーに沿ったボタンの流れに設計し直す。
<アクション事例>
- 自由入力の質問履歴より、特に多かった質問に絞ってボタン表示をする。
解決・未解決数
最終回答に到達後に利用者に聞くアンケート結果です。
- 解決・未解決のボタンを押してくるのは一部の利用者に限られる。
- 絶対値の成果としてカウントする数字ではない。
- 社内FAQの場合は、一般公開のものよりは比較的回答してくる場合は多い。
※チャットボットが質問に対して、本当に回答が出来ているかを確認するには、利用者の質問とチャットボットの回答を一つ一つ確認しない限りは正確には評価できない。(参考値としてサンプリング調査をするなどで評価をできる。)
<基本施策>
- 解決数や解決率は、あくまで任意回答による参考値のため、一喜一憂しすぎない。
- 解決・未解決の比率や数の推移を分析して、増減の主因があるかを確認する。
- 解決・未解決のボタンが押された最終回答を分析する。
- 「解決」が押されたQ&Aを確認することで、成果をもたらしているQ&Aを確認する。
- 「未解決」が押された回答への質問履歴をヒントにQ&Aの改善を行う。
<アクション事例>
- 未解決を押された回数が多かった順にQ&Aを改良する。
- 未解決の主因を探る。以下のどれかを可能な限り特定し、改善を進める。
- 利用者の質問時の情報の不足なのか?
- Q&Aへのマッチング、シナリオ設計に問題があるのか?
- 利用者の置かれた状況が想定外のバリエーションであったか?どんな状況か?
- Q&Aの回答内容が分かりにくくないか?
チャットボットとFAQ検索ページ、ヘルプページとの違いは?使い分けは?
社内FAQチャットボットと、FAQ検索ページやヘルプページとの使い分けについて違いを理解します。
基本的には「情報の表示量の違い」とそこから起こる「情報の認知負荷」に関する違いと、メディアを問わずどこにでも設置して接点を増やせるか、そうではないかの違いとなります。
※認知負荷とは?・・・もともとは認知心理学の言葉で、PCやスマホの仕組みにおけるメモリのように、人間の脳も短期的に記憶できる情報の容量や保持期間が限られている(ワーキングメモリ:作業記憶)。ワーキングメモリへの負荷が増えすぎると、情報を処理しきれなくなる。
社内FAQチャットボット
- 役割 : 聞きたい時に気軽に質問を聞き始めてもらう
- 活用法: 社員が利用する各サイトやツールに設置し、気軽に聞ける接点を増やす
- 特徴 :
- 一度に表示される情報が絞られている
- 情報量が絞れているため、情報の認知負荷が低い
FAQ検索ページやヘルプページ
- 役割 : 積極的に情報を探そうとする利用者に最大限の情報を表示する
- 活用法: チャットボットだけでなく、FAQ検索ページなど情報を一覧表示する方法も併用。候補となり得る情報をなるべく多く表示する方法として提供する。
- 特徴 :
-
- 基本的には画面全体表示のため、一度に表示される情報量が多い
- 情報量が増えると、情報の認知負荷が高まる
情報シス・総務などバックオフィス、営業・CSなどの情報共有。どの範囲で開始するか?
社内FAQチャットボット活用を進める順番は、「小さく区切った範囲のアクションで、最も業務への影響を出しやすい範囲から進める」が基本となります。
始める領域で多いケースは以下の2通りです。
- 情報システムや総務など「社員からの共通の質問が多い」バックオフィス部門から導入を進める。
- 営業、カスタマーサポートなど、お客様の窓口として、顧客接点となるフロント業務の担当部門にて、スタッフ内の製品・サービス知識、業務プロセスに関する事務的な手順やTipsの情報共有。
まとめ
- 社内ヘルプデスクの社内FAQ対応は、AIチャットボットがベター。理由は「多岐に渡る質問」を「明確に聞きたいことがあって」「能動的に調べて聞く」シーンが多いため。
- 情シス・総務などのバックオフィス、営業・CSなどのフロント業務の情報共有など、どちらからのスタートもあり得る。
- 自社にとって一つのアクション当たりの業務改善の影響が大きい領域から進める。
- チャットボットの分析・改善はファネル図で要素分解をして、次のアクションに落とし込む。
hitoboでは課題ごとに次のアクションのアドバイスと、実行のためのタスクブレイクの伴走をしています。また、情報収集段階での課題相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
調査・情報収集段階でhitoboで提供可能な支援
まずはお気軽に資料ダウンロードにて情報収集をおすすめします。hitoboでは情報収集段階でも以下のオンラインミーティングが可能です。
無料トライアルも実施しておりますので、「チャットボットを触ってみたい」、「実際の動作を試したい」などございましたら、お気軽にご相談ください。
情報収集・検討段階のミーティング
- 課題の整理と、考えられるアクション案
- チャットボットに限らず総合的な解決施策のアイディア提供
- 個別の課題状況を踏まえてチャットボット活用の施策順やタスクブレイク
- サービス比較時のチェックポイントの提供
- 無料トライアル希望時は、チャットボット作成支援、簡易テンプレート提供
ご契約後は以下のサポートが可能です。
ご契約後
- 関係者への説明会、キックオフミーティング
- 全体スケジュールの設計
- 作成例、テンプレートの提供
- チャットボット構築時の段階に応じた支援
- テスト運用時の支援
- 本番リリース後の分析と改善の支援
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