
【更新:2023年4月2日】
2023年現在、チャットボット(Chatbot)は過剰期待の時期を乗り越えて企業での業務活用が定着しています。また、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)の生成AIによる進化も期待されます。
本記事では「チャットボットとは何か?」「どう活用できるか?」について、AIチャットボットやシナリオボットについて「仕組み」を図解し、「作り方、費用感」「活用事例」までの概要を伝えます。
目次
チャットボットとは
「チャットボット」という言葉は「チャット」と「ボット」が掛け合わされてできた言葉です。ボットは「ロボット」の略称であり、人がコンピューターを用いて行っていた作業を自動化するプログラムのことです。
チャットボットとは、テキストや音声を通じて会話を自動的に行うプログラムのことです。別名として「人工無脳(じんこうむのう)」や「人工無能(じんこうむのう)」と呼ばれることもあります。
チャットボットの歴史
チャットボットの始まりは1966年に生まれた「ELIZA(イライザ)」です。ELIZAは英語環境のチャットボットです。日本語環境のチャットボットの起源は定かではありません。しかし、1980年台初頭のPC普及期には日本でもチャットボットが存在していたようです。
ChatGPTなどの生成AIによるチャットボットの進化
2022年11月30日(米国時間)にChatGPTがOpenAIより公開され、12月から2月にかけてSNS上で大きく話題となり、ユーザー数も急激に伸ばし、2023年1月時点で1億人のアクティブユーザー数を記録。また、2023年3月1日(米国時間)にChatGPTのAPI版(gpt-3.5-turbo)の公開、さらに2023年3月15日(米国時間)にGPT-4がOpenAIより公開。チャットボットの進化もさることながら、デスクワーカーの業務プロセス自体ががらりと変わっていくことが考えられます。
チャットボットの仕組み
チャットボット作成ツールについて、業務上で必要な製品知識の範囲で、簡単に大別すると「AIチャットボット」「シナリオボット」に分けられます。チャットボットを動作させる仕組みや、作り方がそれぞれ異なります。

細かな技術的な内容は省き、チャットボットの仕組みの構成要素を大きく4つに分けて簡単に図解します。
AIチャットボット

ユーザーから見た特徴
主に「自由入力」に対しても柔軟に回答できるチャットボットがAIチャットボットと呼ばれるようになりました。機械学習や自然言語処理などのAI開発の関連技術を用いて、自由入力への柔軟な応答を実現しているためです。
AIチャットボットの仕組み
構成要素を大きく4つに分けた場合に、AI関連技術がどこで使われているかを示します。

ユーザー入力→認識する→処理する→応答表示
①自由入力 → AIが投稿文全体を認識 → AIが最適な応答を決定 → 手動作成回答を表示
②自由入力 → AIが投稿文全体を認識 → AIが最適な応答を決定 → AIが自動生成文を表示
図から読み取れる通り、①と②の大きな違いは、「担当者が最終回答を事前チェックできているか?」「事前チェックできていないか?」の違いとなります。業務上でチャットボットを活用する主なシーンは、「ユーザーに正しい内容を回答すること」となるため、業務利用の場合は基本的には①のパターンの活用となります。
※②は主に「雑談」で自然な会話を続けることができるチャットボット(例:りんな)や、主に一般論について回答できるChatGPTなど、正式な回答というよりは参照元の情報から「ある程度正しい回答」を提供することでやりとりが成立する用途や、「多少間違いがあったとしても問題がないシーン」で主に活用されています。
AIチャットボットが適した用途
「多岐に渡る質問パターンに自動応答すること」「利用者の質問履歴を元に継続的な改善をすること」が重要となる用途に適しています。
例)
- 社内FAQをチャットボットで回答
- 顧客の多岐に渡る問い合わせにチャットボットで回答
シナリオボット

ユーザーから見た特徴
主に「ボタン入力」でボタンの選択肢から選んで回答に進む形式のチャットボットがシナリオボットと呼ばれています。あらかじめ設計された動作のみを行うため、「シナリオ型チャットボット」や「シナリオボット」と呼ばれます。
シナリオボットの仕組み
If-Then「もし○○と入力があれば、次に○○する」を担当者が一つ一つ設定して構築していきます。基本的にはツリー構造のフロー図を作るイメージです。

ユーザー入力→認識する→処理する→応答表示
③ボタン入力/指定文字列の入力 → 選択肢/文字列を認識 → 次に指定された分岐先 → 手動作成回答を表示
基本的にはユーザーはボタンの選択肢(もしくは「指定された数字」などの予め定義されている文字列)の入力となり、その場で選択肢以外の別の内容を質問することはできません。
そのため「ユーザーが本当は聞きたかったこと」の履歴が残らず、「運営者が事前に想定できていた範囲の質問の履歴」までが残るため、継続的な改善のための分析の手掛かりとなる情報は少なくなります。
シナリオボットが適した用途
「限られた範囲の応答内容に誘導したい場合」「顧客に適した製品・サービスを診断」「数種類の回答への誘導をするだけでよい場合」に主に向いています。
例)
- セールス、マーケティング用途でチャットボットを活用
- 顧客お問い合わせのうち数種類だけ自動応答で対応
シナリオボットを直感的に設計できる製品の例:hitobo (※音声無し)
チャットボットの作り方、費用感
「業務で正式回答をする用途」がチャットボット活用のメインとなるため、事前チェック済みの手動作成回答を表示する、図における①のAIチャットボットと、③のシナリオボットのケースに絞ります。
ここでは、AIチャットボットとシナリオボットのそれぞれの「チャットボットの作り方」、「おおよその費用感」をまとめます。
AIチャットボットの作り方、費用感
製品の方向性が大きくは2つあり、用途に応じて、どちらかがメインであったり、組み合わされたりしています。

1)データを収集して新たに学習させるAIチャットボット
学習用データを大量に用意して、機械学習の技術を用いて新たに学習させることとで、チャットボットの応答を自社の利用用途に最適化させる方法です。
メリット
- 大規模でお問合せデータも多い場合のカスタマーサポート窓口に向いています。大量のデータを集めて学習させるコストや工数を負担できる場合は、自社のお問い合わせ内容に特化することで精度高く認識できるチャットボットを構築できます。
デメリット
- 学習データの内容に偏りがある場合、お問合せ内容に対して偏った認識をするリスクがあるなど、学習内容のマネジメントの難易度が高い点です。構築・運用に費用と工数を一定かける必要が常に生じます。
費用の相場
- 月額20万円~60万円以上
2)学習済みのAIを利用できるAIチャットボット
一から学習作業をしなくても、初めからある程度の対応ができるAIチャットボットもあります。類似表現や同義語などを事前に学習済みなことで、日本語の意味の揺れや表現の揺れを初めから賢く認識出来るものや、一定の分野の範囲内であれば、新たな学習の作業をしなくても自由入力に応答できるAIを利用開始の時点から活用できる製品があります。
メリット
- 自由入力に対応できるチャットボットを短いリードタイムですぐに利用開始できます。
デメリット
以下のいずれかのデメリットは存在します。(※実際には何らかの方法でデメリットを補完できる製品が多くあります。)
- なるべく汎用的な対応をするために偏った学習をしないように作られたAIの場合は、専門的な問合わせや、特殊な問合せ内容が多い場合は対応できる範囲は限られます。
- 上とは逆に、ある用途に特化した学習を事前にしている場合は、各問い合わせ窓口によりユーザー問合せの傾向は異なるので、実際に使い始めてみると自社のユーザーのお問い合わせ対応に適合しないリスクがあります。
費用の相場
- 月額10万円~60万円以上
チャットボットのhitoboの料金をチェックできます。
シナリオボットの作り方、費用感

1)条件式を設定するタイプのシナリオボット
プログラミング作業と同様の設定作業を、プログラミングができない人にもフローの条件分岐をするための項目設定をできるようにした形と言えます。
メリット
- システム内の条件式をチャットボットツールの利用者向けの管理画面にもほぼそのまま反映しています。そのため、チャットボット作成ツールの開発者側からすると、内部のシステム設計と利用者が使う管理画面の設定項目との矛盾が生じない製品開発がしやすいといった開発者側のメリットがメインです。
デメリット
- チャットボット作成ツールの管理画面の利用者から見ると、プログラミング的思考を必要とされる面があり、そういった思考が得意な人でないと理解が難しい。
- 「フローの行き止まりができる」や「分岐先の設定の間違い」などの設計ミスに気づきづらい。
費用の相場
- 月額3万円~15万円ほど
2)グラフィカルな画面で直感的に設計できるタイプのシナリオボット
メリット
- 技術的な知識がない担当者でも、誰にでも直感的な操作でチャットボットの構築と変更ができる。
- フローの全体像を見渡せるツールの場合は、画面上で全体像を見渡しながら構築と変更ができるため、設計ミスがある場合もチェックしやすい。
デメリット
特定プラットフォームに特化した製品(LINE、Facebookなど)の場合、プラットフォームの仕様変更があった場合に、チャットボット作成ツールの提供企業が仕様変更の追随をしていくことと、管理画面の使いやすさの維持の両立をする難易度が高くなります。
費用の相場
- 月額3万円~15万円ほど
チャットボットの活用事例
日本国内でも各種ビジネス用途でチャットボットを使うことが当たり前となりました。プラットフォームもブラウザだけではなく、アプリ、LINE。また社内利用では、Teams、SharePoint、Googleサイトなどグループウェアへの設置など多様化しています。チャットボットの業務上での活用事例をご紹介します。
アーバンリサーチ:社内FAQ導入事例

メンズ・レディースウェアなどの企画・販売・製造及び付随事業を展開する株式会社アーバンリサーチのチャットボットの導入事例です。
社内での導入事例となり、これまでは各店舗のスタッフからの問い合わせを、主に電話及びメールにてヘルプデスクで受け付けており、業務効率化に関して課題を感じていたところにチャットボットを導入することで解決を進めました。
愛知県小牧市

愛知県 小牧市様による、チャットボットの導入事例です。
市民が市役所に来庁しなくても簡単に問い合わせができる方法について、AI技術を活用した自動応答システムを導入する地方自治体も出てきたたことから、チャットボットを導入しました。
イーオのごみ分別案内(横浜市資源循環局)

「イーオのごみ分別案内」は横浜市の資源循環局が提供しているチャットボットです。ごみと資源の分別方法や粗大ごみの処理手数料等を質問することができます。企業だけではなく自治体でのチャットボット活用として注目すべき事例です。
課題に対して最適なチャットボットを選ぶには?
すべての用途に対して万能に適したチャットボットはないため、自社の解決したい課題にあったチャットボットを選ぶことが重要です。チャットボットを選ぶ観点としては以下のようなものがあります。
チャットボットを選ぶ観点
主な観点
- 用途(顧客問い合わせ/セールス、マーケティング/社内FAQ)
- 設置先サイト、アプリ
- 利用者が誰か?
- 製品/サービスのラインナップ数
- 誘導先の数(数種の回答への誘導か?15以上の回答の返答か?)
- 費用
その他の機能的な観点
- セキュリティ
- 設置できるサイト数
- 登録できるQ&A数
- シナリオボットの作りやすさ(全体を見渡せる/修正・変更がしやすい/設計ミスのチェックがしやすい/階層が増えても管理しやすい)
無料で試せるチャットボット
無料トライアルを利用できるチャットボットもあります。以下の点の確認は重要な点でありながらも、実物を操作してみないと確認が難しい点となります。
- チャットボットで何ができるか?
- 各製品ででできることと費用感
- 本当にスムーズにチャットボットが作れるか?
- 構築と改善にかかる工数の見込み
まとめ
- チャットボット製品を大きく分けると、AIチャットボットとシナリオボットがある。
- AIチャットボットとシナリオボットでそれぞれ仕組みや作り方が異なる。ただし、業務で正式回答をするチャットボットの用途の場合は、基本的には、いずれの場合も「手動作成の回答」を表示する点は共通している。
- 万能なチャットボットはなく、自社の用途に合ったものを選ぶ必要がある。
アディッシュでは「hitobo」というチャットボットサービスを提供しています。ユーザーの自己解決を促し、問い合わせ対応業務の軽減が可能です。
無料トライアルも実施しておりますので、「チャットボットを触ってみたい」、「実際の動作を試したい」などございましたら、お気軽にご相談ください。
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参考情報
チャットボットの種類
『夢みるプログラム ~人工無脳・チャットボットで考察する会話と心のアルゴリズム~』(2016)ではチャットボットを4つの系統に大別しています。
- Eliza型(聞き役として相づちや会話の要約をする)
- 選択肢型(決められたシナリオによって選択式で会話をする)
- 辞書型(登録された単語とそれに対する応答をする)
- ログ型(会話ログを利用して文脈に近しい応答をする)