【公開日:2023年9月25日】
2023年8月2日、オンラインセミナー「『社内ヘルプデスクのFAQ効率化とChatGPT活用』~情報漏洩リスクを避けながら業務に活かすには?~」を開催しました。昨今、ChatGPTを含めた生成AIの業務への活用が注目されています。そこで、ChatGPTの仕組みや注意点、社内ヘルプデスク業務に活用する方法をセミナーで解説しました。
【第一部】生成AIの概況〜ChatGPTの業務活用
第一部では、生成AIの概況やChatGPTの基本的な概要などを説明し、ChatGPTをどのように業務活用できるのかを解説しました。
これまでの生成AI周りの概況
2022年11月のOpenAIによるChatGPTの公開から、MicrosoftやGoogleなどの各社のAI公開状況、今後のリリース予定などを時系列で紹介しました。また、あわせて企業や自治体、大学などでのChatGPTの活用や規制状況についてもお話ししました。
経営幹部に実施した生成AIがもたらす影響の調査によると、活用のメリットがリスクを上回ると考えている経営幹部が約70%もいることがわかります。日本国内では生成AIを効果的に活用しようという動きが広まっていることを説明しました。
ChatGPTは具体的に何に使えるのか?
ChatGPTで効率化できるデスクワークの仕事について、文章の要約や、SNS投稿用の文章作成、分類などをChatGPTで行う際の、入力テキストとそれに対応した出力の事例を提示しました。
また、生成AIを活用すれば、知識労働の各プロセスにおいて時間削減や質の向上が可能になります。今後、生成AIの普及によって、人が行う業務は、生成AIの出力の内容確認・修正、方針決定やコンセプト出しがメインになるといった見通しを話しました。
ChatGPTの仕組み
ChatGPTで使用されているモデルや、仕組みなどを紹介しました。ChatGPTの仕組みは、簡単に言うと「連想ゲーム」です。連想ゲームの3つのパターンを紹介し、ChatGPTがどのような仕組みで回答を行っているのかを簡単に紹介しました。
ChatGPTは「無限に回答パターンがある場合」に、欲しい回答とズレが生じる可能性が高くなる特徴があります。そのため、期待する回答を得たい場合は「回答がブレる範囲を狭めるために、指示や制約条件をつけること」または「依頼時に情報を渡し、それを基に回答してもらうこと」などがポイントになります。
2021年9月以降の情報や、学習範囲外の情報など、ChatGPTのデータにないことを聞くと間違った回答をしたり、わからないと答えたりする可能性が高くなります。そのため「最新情報や、時期によって情報が大きく異なる内容はあてにしない」「個人や企業の情報など、ネット検索で得られる情報は聞かない」などが、ChatGTPを利用する上でのポイントだと述べました。
ただし、参照情報をプロンプト上で渡せば欲しい回答を得られやすくなりますが、一度にプロンプトで生成AIに渡せる情報量には制限があります。ほかにも、次の質問時に参照情報が記憶されていないケースがあるなど、利用上の注意点を説明しました。
ChatGPTの無料版、有料版、APIの違い・情報漏洩させずに進めるための注意点
第一部の最後には、ChatGPTの無料版と有料版、API版の違いについて、費用形式・モデル・システム開発の有無などを表にして解説しました。特に重要なポイントが「AIに学習されないか否か」です。無料版と有料版はデフォルトでAI学習がオンになっていますが、API版は常に学習されない仕様になっています。
ChatGPTを使用する際の注意点として、AI学習がオンのときは、社外秘情報や個人情報は入力しない方がよいという点があります。社内情報の入力が必要な場合は「API連携がされたシステムを利用する」もしくは「学習に利用されていないと確認できるサービスを利用する」ことが必要だと説明しました。
【第二部】生成AI以後のFAQの構築〜運用の全手順
第二部では、生成AIを活用したFAQの構築と運用の手順をメインに解説しました。
FAQ構築〜運用手順
生成AI以後のFAQ構築の手順として、以下の5つのステップを踏みます。
- 進め方の設計
- FAQのリストアップ
- FAQのカテゴリ分け
- 頻度でQ&Aを整備する
- FAQをヘルプデスクに活用
「進め方の設計」以外のパートは、生成AIの活用が可能です。そこで、各パートでの活用方法を、具体的なプロンプト例を提示しながら解説しました。
5つ目の「FAQをヘルプデスクに活用」では、活用方法としてチャットボットとFAQシステムの2つがあります。それぞれのメリット・デメリットや特徴、活用法などを紹介しました。
社内問い合わせ対応ツールを選ぶ3つのポイント
社内FAQの運用ツールで気にすべきポイントは、以下の3つです。
- レスポンスが速い
- 正確な回答の提供
- 構築や更新の負荷が少ないこと
「生産性向上が期待できるか」「簡単に利用できて継続した運用が可能か」が、ツール選定のポイントになると説明しました。
生成AIの活用時、何が業務効率に差を生むのか
個々の作業の単位では、さまざまな作業を生成AIで効率化できますが、「入出力時のコピペ作業の発生頻度」「プロンプトの都度の記入の必要有無」の手間の差によって、今後は業務効率に差が出ると考えられます。
ChatGPT単体を利用する場合、プロンプトの設計や入力、コピーペースト作業、出力の生成にかかる時間、利用先へのデータ形式の変換・入力などが、作業を中断させる要素です。ChatGPT API連携がされたシステムの場合、そういった作業を中断する要素を設計次第で無くせます。フローをまとめて効率化でき、入力内容の準備(システムによっては不要)と出力のチェック・修正のみで業務が完結します。
また、Q&A自動生成の業務においても、ChatGPT単体での利用と、ChatGPT API連携がされたシステムの利用では、違いが生じます。API連携システムの利用によって、自動化を連続させるフロー設計が可能なため、大幅な効率化が可能であることを述べました。
今後のチャットボットへの応用可能性
ヘルプデスクへの活用として、今後は「Q&Aの自動生成」「顧客問い合わせ履歴の自動分析」「自動分析を基にしたQ&Aの自動生成」が可能になると考えられます。最終的には、人が行うのは「自動分析の妥当性のチェック」「自動生成されたQ&A文案のニュアンスのチェック」のみになるだろうと述べました。
まとめ
ChatGPTが公開されてからというもの、生成AIの活用の動きが急速に広まっています。最終的には、人間によって行う作業は「生成AIの出力の内容確認・修正」「方針決定やコンセプト出し」がメインになると考えられています。
ChatGPTは無限に回答パターンがある場合に、欲しい回答とズレが生じる可能性が高いため、プロンプトに制約条件や参照情報を与えるのがコツです。さらに、API連携されたシステムを利用することで、情報漏洩へのリスクを防ぐことが重要だと説明しました。
生成AIは、FAQの構築から運用に活用可能です。今後は、Q&Aの自動生成や顧客問い合わせ履歴の自動分析、自動分析を基にしたQ&Aの自動生成が、生成AIによって可能になります。AIを使いこなす個人や企業を中心に仕事が集まる可能性が高いため、スピーディーなAI導入が求められるでしょう。
今回のセミナーのアーカイブ動画はこちらから閲覧用のURLを取得できます。内容に興味を持っていただいた方は、ぜひご確認ください。