【公開日:2023年5月23日】
働き方改革やコロナ禍以降の労働環境の整備において、業務効率化に取り組む企業は多いです。しかし、自社の課題をどのように解消すれば良いか、なかなかアイデアが浮かばないのではないでしょうか。
そこで、本記事では業務効率化に成功した企業の事例を紹介します。自社に応用できるヒントが見つかる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
業務効率化に取り組むメリット3選

業務効率化とは、仕事から「ムリ・ムダ・ムラ」をなくす取り組みを指します。業務効率化に取り組むメリットは、以下の3つです。
- 生産性向上
- コスト軽減
- 社員のモチベーション向上
自社の課題となっているものがないか、それぞれ順番に見ていきましょう。
生産性向上
業務を効率化することで、従来より少ない時間や人員で成果を出せるようになり企業の生産性は向上します。たとえば工場の場合、ボトルネックとなっている製造工程を改善することで、従来と同じ稼働時間でも生産量をアップできるでしょう。
生産量の増加は、販売量の拡大へとつなげることもできます。投資コストに対して高い成果を発揮できるようになるため、企業の成長を促進できます。
コスト軽減
効率化に取り組むことで業務ごとにかかっているコストが明確になり、ムダの軽減につながります。コストには大きく分けて「経費」と「業務コスト」の2つがあります。
経費は、賃料やコピー代などの経営にかかる費用です。
一方、業務コストは社員の業務中の動線や時間など、金銭面以外にムダが発生しているポイントを指します。業務効率化の取り組みによって「経費」と「業務コスト」を同時に低減可能です。
社員のモチベーション向上
従来と同じ作業をより少ない時間で完了できるため、社員の労働時間は短くなります。残業時間の短縮によって労働環境が改善し、社員のモチベーション向上が期待できます。
「働き方改革」ではワークライフバランスの改善を求めており、企業にとって労働環境の整備は重要なテーマです。社員のモチベーション向上は、業務での高いパフォーマンスの発揮につながります。
業務効率化の成功事例7選

この章では、業務効率化に成功した7つの事例を紹介します。紹介する事例で効率化・軽減した業務は、以下のとおりです。
- 社員管理
- SaaSアカウント管理
- 情報共有
- ペーパーレス化
- デスク中心の働き方
- 業務時間のロス
- コミュニケーションコスト
成功事例は、自社で業務効率化に取り組む際のモデルとして活用できます。ぜひ参考にしてみてください。
社員管理を効率化した事例
株式会社フィナンシャル・エージェンシーは、保険業界の商品企画開発や販売などを手がける企業です。多くの新卒内定者や400人近いアルバイト社員の管理が必要で、雇用手続きや年末調整の書類作業の多さに課題を抱えていました。
そこで同社では、雇用契約や入社手続きをペーパーレスで完結できるツールを導入し、業務効率化を図ります。導入の結果、3週間かかっていた年末調整業務を7日間で完了できるようになりました。
SaaSアカウント管理を効率化した事例
ナイル株式会社は、デジタルマーケティング支援や自動車事業を展開する企業です。同社の課題は、社員が利用するSaaSアカウント管理のコスト軽減でした。「SaaS」とはクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネット経由でユーザーが利用できるサービスを指します。
業務効率化を図るため、SaaSの入退社時のアカウント発行・削除を一元管理できるツールを導入しました。導入の結果、発行や削除以外にも「正しくアカウントが運用されているか」「利用実態との乖離がないか」の定期的なチェックが可能になっています。
情報共有を効率化した事例
鹿島建設株式会社は、日本の建設業界におけるリーディングカンパニーの1つです。横浜支店では、着工前に現場所長とICTの活用に向けて検討する「ICT 採否検討会」を実施しています。大規模な現場は作業員が1,000 人以上にのぼるため、現場での情報共有をどのように改善するかが大きな課題でした。
そこで、進捗確認のシステムにコミュニケーションツールを連携させる方法を採用しました。現場の利便性がアップし、工程管理のスピードが向上しています。また、コミュニケーションツールに搭載されたトランシーバー機能を活用したことで、ボタン1つで情報共有ができるようになりました。
参照元:建設現場の情報共有をTeamsに一元化。Teamsトランシーバー機能やPowerBIも本格活用し、リアルタイムな工事進捗の共有を実現|Microsoft
ペーパーレス化の事例
楽天生命保険株式会社は、楽天グループ内で生命保険事業を手がける企業です。契約書や約款など、保険の契約には大量の紙を印刷する必要があります。契約書面のペーパーレス化を進められれば、紙代や印刷代の削減効果が大きいです。
そこで同社は「申し込みシステムの刷新」と「タブレットの導入」を推進しました。ペーパーレス化に加えて、手続きの簡略化による業務時間の短縮を達成しています。顧客対応とサービス品質の面で、大きな進展を遂げることに成功しました。
デスク中心の働き方を軽減した事例
全日本空輸株式会社は、国内最大の路線数を持つ航空会社です。業務で利用していたメールシステムのサポートが2013年で終了することになり、新しい体制への移行が必要でした。当時のメールボックスの容量は、1人あたり50MBです。多くの社員は古いメールが消えないようローカル端末に保存しており、自分のデバイスがあるデスク中心のワークスタイルになっていました。
しかし、世の中ではインターネットの発達でクラウドサービスが登場し、時間や場所にとらわれない働き方が広がっています。そこで同社では2013年にGoogle Workspaceを導入し、クラウドサービスの活用を図りました。
スプレッドシートの共有やチャットしながらの同時作業など、Googleのアプリケーションを活用することで業務の生産性が向上しています。クラウドサービスの導入によって、社内アンケート調査にかかる時間は従来の2週間から最短2日に短縮されました。
業務時間のロスを軽減した事例
カシオ計算機株式会社は、時計や電子辞書などの精密電子機器を製造・販売するメーカーです。2011年まで利用していたグループウェア製品は、機能がたびたびストップする品質的な問題を抱えていました。品質改善やスマートフォンへの対応が見込めないことから別製品へ移行する計画がはじまり、2011年にGoogle Workspaceを導入します。
Google Workspaceは99.9%の稼働率が保証されているため、安定したシステム運用が可能になりました。また、ブラウザがあればどこでもメールを開ける環境が整うため、自分のPCを持ち歩く手間がなくなった点が社員からも好評です。
コミュニケーションコストを軽減した事例
株式会社シージェイ・システムは、電話会社への加入前調査や回線工事を手がける企業です。同社では、ExcelやPowerPointで作成した業務報告書を、クライアントにメール添付して提出しています。しかし、容量の大きいメールを送信できないクライアントには、書類をプリントアウトし往復40㎞を毎日届ける手間がかかっていました。
そこで、業務効率化のために同社と取引先でGoogle Workspaceを導入し、容量の大きい業務報告書を共有ファイルで管理できるようにしました。共有スピードが向上するだけでなく、メールボックスの容量問題を同時に解決でき、業務効率化を実現しています。
また、車両や調査工具の管理にはGoogleドキュメントを活用しています。社内に貼られたQRコードから、車両の管理日報が提出できるフォームにアクセスできる仕組みになっており、業務効率化とペーパーレスを実現しました。
事例からわかる業務効率化を成功させる3つのポイント

業務効率化の成功事例には、いくつかの共通点があります。成功に必要なポイントは、以下の3つです。
- 業務プロセスを徹底的に分析する
- マニュアルを作成する
- 業務を自動化する
事例に共通するポイントを理解することで、成功率のアップにつながります。それぞれ順番に見ていきましょう。
業務プロセスを徹底的に分析する
効率化を成功させるためには、業務の課題を表面的に改善するだけでは不十分です。業務プロセスを徹底的に深掘りして、原因を特定・改善する必要があります。原因があいまいな状態で取り組み進めても、時間の経過とともに同様の課題が繰り返し発生するでしょう。
取り組みの効果を高めるためには、業務フローの課題をすべて洗い出して原因を分析し、改善策を検討することが重要です。
マニュアルを作成する
社員同士のノウハウ共有のため、効率化を図る上では業務マニュアルを作成することが重要です。マニュアル化することで、担当者の違いによるムラを防ぎ、業務の品質を担保できます。
マニュアルには業務の手順やツールの使い方のほかに、業務で得た知見や考察を共有しておきましょう。知見や考察の共有によって、同様の事例を効率的に進めるノウハウを社内に蓄積できます。