【更新日:2022年6月28日/公開日:2017年1月26日】
2022年現在、チャットボットは過剰期待の時期を越え、利用が定着しました。2016年に「チャットボット元年」と言われ、現在は一般化したチャットボットの基礎知識について、本記事では概要をお伝えいたします。
2023年版の記事はこちら
目次
チャットボットとは
「チャットボット」という言葉は「チャット」と「ボット」が掛け合わされてできた言葉です。
ちなみに英語ではチャットボットのことを「chatbot」や「chatterbot」と呼んでいます。ボットは「ロボット」の略称であり、人がコンピューターを用いて行っていた作業を自動化するプログラムのことです。
チャットボットとは、テキストや音声を通じて会話を自動的に行うプログラムのことです。別名として「人工無脳(じんこうむのう)」や「人工無能(じんこうむのう)」と呼ばれることもあります。
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チャットボットの歴史
チャットボットの始まりは1966年に生まれた「ELIZA(イライザ)」です。ELIZAは英語環境のチャットボットです。
日本語環境のチャットボットの起源は定かではありません。しかし、1980年台初頭のPC普及期には日本でもチャットボットが存在していたようです。
チャットボットの種類
『夢みるプログラム ~人工無脳・チャットボットで考察する会話と心のアルゴリズム~』(2016)ではチャットボットを4つの系統に大別しています。
- Eliza型(聞き役として相づちや会話の要約をする)
- 選択肢型(決められたシナリオによって選択式で会話をする)
- 辞書型(登録された単語とそれに対する応答をする)
- ログ型(会話ログを利用して文脈に近しい応答をする)
チャットボットと人工知能の関係
人工知能と読解
2011年以降、企業が人工知能(AI)関連技術の商業利用をはじめました。
- IBM Watson(2011)
- Siri(2011)
- Google Now(2012)
- Microsoft Cortana(2014)
これらの商業化された人工知能サービスでは、膨大なデータを用いてテキストや音声、画像のパターン認識がクラウド経由で可能になりました。その結果、ユーザーが人工知能”的”と感じられるような機能が実現されました。現状の人工知能では「言語の意味理解」や「文脈の理解および読解」は難しいと考えられています。
2011年に立ち上がった「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトでは、人工知能(通称:東ロボくん)を用いて、①2016年度までに大学入試センター試験で高得点をとること、②2021年度に東京大学入試を突破することを目標としていましたが、問題文の意味理解が課題となり東大受験を断念しました。
本プロジェクトのリーダーである、国立情報学研究所の新井紀子教授が認めるように、東ロボくんは「科目の得手不得手があるというより、意味を読み取るのが苦手」だ。卓抜な計算力と暗記力があり、問題文を計算式に解析できれば、簡単に答えを出せるが、問題文に「意味」を理解しなければならない要素があれば、現状ではお手上げだ。
「東ロボくん」が偏差値57で東大受験を諦めた理由(ダイヤモンド・オンライン 16/11/18)
マイクロソフトが運営する「りんな」が日本では広く知られたチャットボットですが、このりんなにも人工知能の技術が用いられています。
一見、自然な会話が続くので、人の言葉を理解したうえで応答しているようですが、実はネット上の膨大な情報から、会話が続いた言葉を統計的に選んだ上で文章を作り出しています。
人工知能と学習
人工知能のアプローチとして「ディープラーニング」をはじめとする「機械学習」が挙げられます。両者ともアウトプットの元となる「学習データ」や「教師データ」が必要となります。そのデータはアルゴリズム自体が生成したり、人為的に作ったデータを取り込むことによってインプットされます。しかしながら、現状の人工知能が自ら学び、独りでに賢くなるには制約があります。
Microsoftが開発した人工知能の「Tay」は、ユーザーが話しかけた内容に対して意味のある返事をするオンラインボットで、会話理解研究のために試験的にTwitter・GroupMe・Kikでリリースされました。しかし、悪意のあるユーザーたちによってTayは人種差別・性差別・暴力表現を教えられてしまい、不適切な発言を連発してリリースから約16時間後にサービスが停止されてしまうという事態になった
MicrosoftのAI「Tay」がTwitterで不適切発言を連発し狂ってしまった理由とは?(GIGAZINE 16/03/29)
Tayはりんなやりんなの元となった中国の「小氷(シャオアイス)」の成功を受け、マイクロソフトが欧米ユーザー向けに提供していたチャットボットです。Tayが不適切な発言をしてしまったのは、記事にあるように悪用対策の不備が原因でもありますが、人が監視をしてチューニングをする仕様のチャットボットではなかったことも大きな原因としてあります。
2016年12月13日にマイクロソフトは「Zo.ai」という新たなチャットボットを公開しました。
Zoは、失敗に終わったMicrosoftの「Tay.ai」に代わるチャットボットである。同社は2016年、Tayの公開直後に、ユーザーが同チャットボットに人種差別やヘイト発言をするよう誘導させたことを受け、Tayを停止した。ユーザーは先週、Zoの方がTayよりはるかに制限が多いことに気づいたが、Tayが公開後すぐに暴走したことを考えると意外なことではない。
MS、新チャットボット「Zo.ai」を正式に発表(CNET Japan 16/12/14)
記事にあるようにマイクロソフトはTayの失敗をふまえ、機能制限をして慎重に公開したようです。
チャットボットにおける人工知能の活用は中長期的には期待されますが、現状では善悪の判断を含め学習データを人がコントロールし、チューニングしていくことが求められています。
チャットボットが注目されている背景
2016年にはメッセージングアプリのオープン化が行われました。
オープン化とはメッセージングアプリが「チャットボットプラットフォーム」になったことを意味します。つまりは外部企業がチャットボットを通じたサービス提供を行えるようになったのです。多数の企業が参入し、注目されているチャットボットプラットフォームが「Facebook」と「LINE」です。
Facebookのチャットボットプラットフォーム「bots on Messenger」
2016年4月にFacebookの開発者向けカンファレンス「F8」で発表されました。
FacebookはMessengerのチャットボットプラットフォーム「bots on Messenger」を発表した。このプラットフォームのSend/Receive APIでは、ボットは単純な文字列だけでなく画像、リンク、行動を起こすボタンを含むstructured messages〔構造化メッセージ〕をユーザーとやりとりできる。
Facebook「F8」開発者カンファレンスの発表まとめ(TechCrunch Japan 16/4/13)
Facebookによる発表の詳細は以下の動画から確認できます。
Facebookは3ヶ月後の同年7月、既に1万1,000のチャットボットが公開されていると発表しました。今なおFacebookチャットボットの数は増えており、世界的にチャットボットのトレンドは続いています。
「bots on Messenger」関連リンク
LINEのチャットボットプラットフォーム「Messaging API」
2016年9月にLINEの開発者向けカンファレンス「LINE DEVELOPER DAY」に発表されました。
「LINE ビジネスコネクト」導入企業やパートナーに限定公開されていたAPIから新しくなり、Messaging APIは「LINE公式アカウント」「LINE@」にも提供されることになりました。LINEがMessaging APIで実現しようとしている世界観は以下の動画で見ることができます。
※2019年7月18日スケジュール変更を発表
・2019年4月18日~2020年1月13日
「LINE@」利用者は「LINE公式アカウント」へサービス移行手続きをする
・2020年1月14日~2月28日
順次LINE公式アカウントへの強制サービス移行を実施
・2020年3月1日~
サービス統合
2020年3月1日より「LINE@」は「LINE公式アカウント」「LINEビジネスコネクト」「LINEカスタマーコネクト」とサービス統合され、一つのサービスとなりますサービス名は「LINE公式アカウント」です。
料金が改定されたことによってMessaging APIを用いたチャットボットの導入がしやすくなりました。またMessaging APIを使用すると、使えなくなってしまった1:1でのトーク機能が使えるようにようになります。1:1トークの名称は「チャット」に変更となります。
>>参考:
2017年3月18日には優勝賞金1,000万円の「LINE Bot Awards」が開催され、約3ヶ月の応募期間で815件の応募がありました。応募のうち79%が個人開発者、21%が法人からであり、日本でも企業だけにとどまらず、個人の間でもチャットボットが盛り上がりを見せています。
「LINE BOT AWARDS」の結果
部門賞
- 「グランプリ」:&HAND(LINE ID:@jqv8293w)
- 「エンタメ」部門賞:該当なし
- 「ライフスタイル」部門賞:ヤマト運輸(LINE ID:@yamato_transport)
- 「ゲーム」部門賞:ワンナイト人狼BOT(LINE ID:@nto6347b)
- 「GEEK」部門賞:シャクレ(LINE ID:@zhc1140s)
- 「ローカライズ」部門賞:Teman Jalan(LINE ID:@ngampusbareng)
- 「対話エンジン」部門賞:Botnoi(LINE ID:@botnoi)
- 「グループトーク」部門賞:グループ精算bot-Checkun-(LINE ID:@rfy8689j)
- 「IoT/Beacon」部門賞:雪山Bot with LINE Beacon(LINE ID:@hlk9118m)
- 「スタートアップ」部門賞:EncodeRing(LINE ID:@uil3575g)
- 「学生」部門賞:ミッチー(100万円)
パートナー賞
- 「DMM.make AKIBA」賞:&HAND(LINE ID:@jqv8293w)
- 「UserLocal」賞:ポアルン -APOLO-(LINE ID:@jqv8293w)
- 「日本マイクロソフト」賞:ナビタイム(LINE ID:@navitime)
「LINE BOT AWARDS」関連リンク
- LINEボットアワード結果速報、最優秀賞1000万円を獲得したのは「&HAND」#BOTawards(TechWave 17/03/18)
- 障害者をチャットボットで助ける「&HAND」に賞金1000万円–「LINE BOT AWARDS」(CNET Japan 17/03/22)
「Messaging API」関連リンク
チャットボットの国内事例
日本国内でも雑談等のエンターテイメント用途だけではなく、カスタマーサポート等のビジネス用途のチャットボットが増えてきました。プラットフォームもブラウザだけではなく、アプリ、LINE、Facebookと多様化しつつあります。各プラットフォーム別に国内の代表的な事例をご紹介します。
アーバンリサーチ:社内FAQ導入事例
メンズ・レディースウェアなどの企画・販売・製造及び付随事業を展開する株式会社アーバンリサーチのチャットボット「hitobo」の導入事例です。
社内での導入事例となり、これまでは各店舗のスタッフからの問い合わせを、主に電話及びメールにてヘルプデスクで受け付けており、業務効率化に関して課題を感じていたところにチャットボットhitoboを導入することで解決を進めました。
愛知県小牧市
愛知県 小牧市様による、チャットボットhitoboの導入事例です。
市民が市役所に来庁しなくても簡単に問い合わせができる方法について、AI技術を活用した自動応答システムを導入する地方自治体も出てきたたことから、チャットボットhitoboを導入されました。
LOHACOのマナミさん
「LOHACO」はオフィス用具通販のアスクルが運営している、個人向け通販サイトです。2014年9月からカスタマサポートの効率化、省人化を目指し、AI型チャットボット「マナミさん」がLOHACOに導入されました。
マナミさんは24時間365日稼働し、2016年5月19日時点で、全問い合わせの3分の1が対応可能となり、結果として6.5人分の人件費削減につながりました。
2016年11月21日には「LINE Customer Connect」を用いた試験運用を開始し、マナミさんがLINE上でも利用できるようになりました。マナミさんが自動応答できなかった場合は、オペレーターにシームレスに引き継ぐことが可能となっています。
LINE Customer Connect
「LINE Customer Connect」とは、LINEが提供している法人向けカスタマーサポートサービスのことです。LINE カスタマーアカウントの新規開設、もしくはLINE公式アカウントやLINE ビジネスコネクトアカウントのオプションとして導入可能です。LINE@では導入することができません。
連携するシステムによってFAQベースの人工知能による自動応答「Chat Option(AI)」と有人対応「Chat Option(Manual)」を相互に切り替えることができ、適切に回答できなかった質問は機械学習や有人によるFAQのアップデートで対応します。コールセンターに入電した問い合わせを混雑時や営業時間外には、LINEアカウント上のチャットサポートに誘導する機能もあります(「Call to LINE」)
Relux
「Relux」は高級旅館、ホテルの宿泊予約サービスです。Facebookメッセンジャーで「チャットボット+コンシェルジュ」のサービスを提供しており、宿泊施設の相談をすることができます。Facebookメッセンジャー以前にもLINE@でコンシェルジュサービスを提供していたReluxですが、チャットはメールよりも3倍程度CVRが高い結果が出たことをふまえ、Facebookメッセンジャーでのチャットボット導入に踏み切ったようです。
※現在ではFacebookメッセンジャーでのチャットボットは起動しないようです。お問い合わせ対応自体はFacebookメッセンジャー上でもコンシェルジュの方に対応していただけます。
イーオのごみ分別案内(横浜市資源循環局)
「イーオのごみ分別案内」は横浜市の資源循環局が提供しているチャットボットです。ごみと資源の分別方法や粗大ごみの処理手数料等を質問することができます。企業だけではなく自治体でのチャットボット活用として注目すべき事例です。
チャットボットの海外事例
「ChatBottle」は世界中の優れたチャットボットを決めるコンテストを開催しました(投票期間:2017年1月9日~1月18日)。
1st ChatBottle Awards. Vote for The Best Bots Of The Year(ChatBottle 17/1/18)
部門は「旅行」「生産性」「ソーシャル」「エンターテインメント」「eコマース」「ニュース」の6つ。コンテストの結果は以下の通りです。各部門の賞とChatBottle編集部賞が選ばれました。
- 旅行部門賞: Instalocate(飛行情報の確認やタクシー予約ができるボット)
- 生産性部門賞:Meekan(ミーティング等のスケジュール調整ができるボット)
- ソーシャル部門賞:Foxy(Facebook上で利用できるオンラインマッチングボット)
- エンターテイメント部門賞:BFF Trump(トランプ大統領の注目発言を集めたボット)
- eコマース部門賞:chatShopper(欲しいファッションアイテムが探せるボット)
- ニュース部門賞:TechCrunch(興味のあるニュースを教えてくれるボット)
- ChatBottle編集部賞:Swelly(意思決定を支援するボットプラットフォーム)
1st ChatBottle Awards winners are Instalocate, Meekan, Foxsy, BFF Trump, chatShopper, TechCrunch and Swelly bots(ChatBottle 17/1/23)
チャットボットの作り方
チャットボットを作るにはいくつか方法があります。大きく分けると以下のとおりです。
- メッセージングアプリAPIを活用する
- Bot開発フレームワークを活用する
- クラウド人工知能(機械学習)サービスを活用する
- チャットボット作成サービスを活用する
利用すべきチャットボットの種類についての詳しい記事はこちらをご覧ください。
メッセージングアプリAPI
Bot開発フレームワーク
複数のメッセージングアプリでチャットボットを作りたい場合、Bot開発フレームワークを利用する方法があります。フレームワークによっては対応していないプラットフォームもありますが、適切なフレームワークを選択すればプログラミングをする時間が短縮できます。
- Microsoft Bot Framework(Skype、Slack、Facebookメッセンジャー等に対応)
- Amazon Lex(Facebookメッセンジャー、LINE等に対応)
クラウド人工知能(機械学習)サービス
クラウドで利用できる人工知能(機械学習)サービスを使う方法もあります。海外産、国産ともに存在しますが、表記のゆれに対応したい場合等に活用するとチャットボットの応答精度が上がります。
チャットボット作成サービス
プログラミングの必要がなく、非エンジニアでもブラウザ上でチャットボットを作成することが可能です。
hachidori(ハチドリ)
「hachidori」はLINE BOT AWARDSのパートナーに選ばれているチャットボット作成ツールです。ブラウザ上の同一画面でLINEやFacebookのチャットボットを作成することができます。
Repl-AI
「Repl-AI」はNTTが提供しているチャットボット作成サービスです。docomo Developer supportのアカウントを取得する必要がありますが、30日間無料でトライアルすることができます。Facebook、LINEに対応。
ChatFuel
「ChatFuel」はFacebookのチャットボットを作成できる海外のツールです。ニュースサイト「TechCrunch」のチャットボットに採用されています。Facebookページとの連携がしやすいのが特徴です。
Motion AI
「Motion AI」はフローチャート形式でチャットボットが作成できるツールです。FacebookやSlackのチャットボットを作ることができます。2種類までは無料でチャットボットを作成することができます。
自社の課題に対して最適な自己解決手段を選ぶには?
チャットボットなどの自己解決ツール選びの肝はユーザー視点と運営者視点の両方からチェックすること
シナリオチャットボット、AIチャットボット、FAQシステムなど、ここ数年でチャットボットをはじめ、新たなソリューションの選択肢が増えました。そのおかげでユーザーがカスタマーサポート窓口まで問い合わせをしなくとも、スピーディに自己解決する手段を提供しやすくなりました。
それらのツールは、リモートワークの広がりとともに、社内で分からないことがあった場合に、気軽かつ迅速に、質問を自己解決できる社内ヘルプデスクとしても活用されています。一方で「ツールの選択肢が多すぎて、どの自己解決手段がどう違うのか?比較が難しい」という声をよく聞きます。
以下の記事では、自社に適した自己解決手段を比較し選択できるように、「ユーザーから見た違い」、「自己解決ツールを導入・運用する運営者から見た違い」で比較し、シンプルに違いを理解できるように各ソリューションの特徴をまとめています。
以下の記事では各種の自己解決手段の比較するポイントを紹介しています。
まとめ・無料で試せるチャットボット
今回は、チャットボットの基礎知識・背景・実際にチャットボットを導入されているサービスなどをご紹介させていただきました。
導入を検討されている場合は、無料トライアルを実施しているサービスもありますので、まずは触ってみるのが一番だと思います。
以下の記事では無料トライアルを実施しているサービスなどをまとめていますので、ご活用ください。
アディッシュでは「hitobo」というチャットボットサービスを提供しています。ユーザーの自己解決を促し、問い合わせ対応業務の軽減が可能です。
無料トライアルも実施しておりますので、「チャットボットを触ってみたい」、「実際の動作を試したい」などございましたら、お気軽にご相談ください。